海外プラント輸送部の薦田と山九インドネシア国際の森です。
■現在の担当業務と経歴
◆海外プラント輸送部 薦田
海外での重量物輸送作業対応力を強化するため、重量物で歴史のある山九インドネシア国際の現状とニーズを把握し、 将来の海外での重量物事業拡大に向けた企画・立案を行うためインドネシアに研修に来ています。
1981年入社(広島支店28年、東北支店4年) 回転機定修工事、モジュール輸送、6ヶ所村向け遠心分離機輸送、三菱構内の梱包・輸送・船積と、主に重量物輸送作業・ 特殊輸送作業に従事してきました。
◆山九インドネシア国際 森
2014年度以降に輻輳するインドネシア国内大型プロジェクトを受注するため、各案件の営業・計画・見積業務を行っています。
1991年入社(横浜支店22年) 輸出乙仲業務3年経験、その後19年以上横浜港にて港湾運送事業に携わり、主に在来船・コンテナターミナル業務に従事してきました。
二人とも、今年6月に、インドネシアに来たばかりですが、Patuha(パトゥーハ)地熱発電所向け発電機輸送・据付作業を9月に一緒に対応しましたので、その話をしたいと思います。
■ インドネシア電力事情
インドネシアは、ASEAN唯一のG20メンバー国として発展を続け、BRICsに肩を並べるほどの経済成長振りを見せています。
日本の2倍の2.4億人の人口(世界第4位)ですが、驚くことに平均年齢28歳(日本45歳)で、30歳未満が人口の半分を占める大きなビジネス市場です。
又、ここ10年のインドネシア経済成長率は、4.5%~6.5%で推移し、この高い経済成長を背景に電力需要が急速に増加しており、電力エネルギーの安定供給は、官民一体となった国家事業として位置付けられています。
特に、地方電化、環境エネルギー面で、地熱発電が注目されており、現時点でも29件のプロジェクトが計画されています。 地熱以外でも、火力発電プロジェクトでは、インドネシア全土でここ数年大型の発電所建設予定があり、近年の電力不足への対応が急がれています。
また、一人当たりの所得では他のASEAN国でも、ブルネイ・シンガポール・マレーシア、タイに続き現在5番目。
今後、投資制度や税制など制度における透明性の進捗やインフラの整備で、大きな消費市場としてではなく、世界市場の生産基地になりえる国であるといわれています。
ASEANの中でもここインドネシアは、市場・気候・食べ物、三つ巴でホットな国です。
■パトゥーハ地熱発電所の場所と特徴
ジャワ島中部バンドン市内から南へ約44kmの位置にあり、標高は約2,000m、インドネシア人にとっての避暑地で有名なチゥィディ 町から17km山間部に入った山奥に建設中です。
輸送経路は、ジャカルタ港 ~ コポ市 (高速道路含め148km) ~ パトゥーハサイト(一般道27 km+山道17 km)の総走行 距離192 km。
長大物・重量物の一般道での輸送作業は夜間のみにほぼ 限定されており結局、 「高速道路2夜 + 一般道2夜 + 山道1昼夜」 の合計6日間の輸送作業でした。
一般道では、普通に馬車が交通手段で使われていたり、標高2,000mのせいか南国なのに寒かったり(お客様事務所にヒーター設置)、紫外線の影響からか、すぐ日焼けする(バンドゥン市内は、色白で有名)等、大きな思い違いがありました。
山道の周辺は、お茶・イチゴ・ネギ・キャベツの栽培で遊休地がないほどで、農民はほぼ専業農家として生計を立てている様子でした。
ちなみに、イチゴを食べましたが、全く甘くなかったです。 (インドネシアでは、イチゴは酸っぱい果物という認識です)
輸送経路図(ジャカルタ~パトゥーハ)
■ 輸送スタイル
今回の輸送対象貨物:L5,200×W4,200×H3,700mm, 貨物総重量:86 ton
トラクター(牽引車)+非自走式ドーリ(貨物積載輸送用の台車・積載能力:310 ton)と、公道輸送では、あまり見慣れない輸送スタイルですが、山道では、この様な車両編成が最適な輸送手段です。
又、登り勾配と地盤の悪さからトラクター1台の牽引では登れないと判断し、もう一台のトラクターを後方より追従させました。
照明を積載したトラック+ケーブル嵩上げ部隊(詳細は後述)の軽トラック+発電機輸送用ドーリ+追従トラクターの編成で、パトカー2台+白バイ2台の警護体制で輸送作業に臨みました。
■ 山登り
さて、いよいよ山登り開始です。
山道は、道幅4.5m~6m、最大勾配18%、急カーブ多数、路面は、石畳道路もなく、軟弱地盤ばかりで、輸送作業をする側にとっては劣悪です。
又、高さ4m ~ 5mほどの電線・電話ケーブルが500本以上もあり、都度、竹竿で嵩上げしながら輸送するので、時速1.5 km/hour が精一杯。良く見ると水道パイプも公道をまたいだ頭上に通っていたのには驚き。
山道沿いの3つの村の住民も、真夜中にも関わらず、老若男女問わず寝巻き姿でほぼ全員が見物していたので、トラブルはご法度。慎重に慎重を重ねて輸送作業を行いました。
村を過ぎれば、今度は、急勾配・急カーブの連続でここからが正念場です。
第一関門は、山道入口から5.7km地点の急勾配+急カーブ+軟弱地盤箇所。
先頭のトラクターが牽引しながらも滑り出したため、後方にもう一台のトラクターを連結し、プッシュするも状況は改善せず、後方トラクターを前方に配置し、重連のトラクターでドーリを牽引し、やっとこさでその場を乗り切ることができました。
この一箇所で要した時間は2時間、日本人スタッフ、ナショナル社員とも、喜びの笑みを浮かべながら「良かった。(バグース: インドネシア語で‘すごい、すばらしい’という意味)」という声と拍手が自然とでました。
(第一関門)
第二関門は、山道入口から8km地点の小さな橋で、橋に荷重がかからないように事前にランプウェイ(補強設備)を設置。橋の損傷も無く、無事クリアー。
サイトまで、まだ残り9kmありましたが、順調に輸送し、無事サイトに到着しました。
輸送作業当日が雨だったら間違いなくスリップを繰り返して、登り切るのはもっと困難だったのではないかと思います。
でも最終到着地点で、参加者誰しも、皆でやり遂げたという達成感と、精神的・肉体的に疲れきった表情が入り混じったなんともいえない顔をしていたのが思い出せます。
それもそのはず、一般道から歩いて指揮・誘導したため、総歩行距離は44 km。
フルマラソンに匹敵する距離の山道を歩いたため、足は棒のようになり、身体は疲労困憊していましたが、私たち自身も、心の中では、「やり遂げたという満足感」で一杯でした。
(第二関門)
今回の作業を大きなトラブルもなく無事に完工出来たのも、事前の緻密な計画と作業に携わった社員・お客様及び関係した皆様の協力はもとより、「言語の違ったもの同士によるチームワーク」の重要性を痛感できたと同時に、「仕事に対する個々人の責任感と忠誠心」が本当に大切であることを再確認できました。
以上、インドネシアから薦田&森でした!!(筆者:薦田、森)
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