北京山九物流有限公司天津支店の笠井です。 現在は天津支店長として天津支店全体の事業運営に携わっています。 海外駐在は三度目。 海外での生活は延べ11年となり、社歴の半分以上を海外で過ごしております。
■私の経歴
1990年入社~1993年周南支店、1993年~1997年天津天山国際貨運有限公司に出向し、2001年~2007年は山九東源国際(香港)有限公司に出向、今回2011年に北京山九物流有限公司天津支店に出向となり、天津での生活は1997年以来14年ぶり二度目となります。 そこで変貌する中国天津の発展ぶりに焦点を当て私の駐在生活を紹介したいと思います。
■1990年代の中国天津での駐在生活
当時私は、天津市内から東へ50kmほど離れたタングーという港頭地区に住んでおり、生活インフラが全く整っていない状態でした。アパートはガスも来ておらず、電気コンロの電源を入れると部屋全体のブレーカーが落ちて部屋が停電するありさま。 水道水を煮沸消毒して飲みたくとも飲めず、さらに断水、停電が日常茶飯事に起こるため、結局コーラを大量購入して飲み水代わりとし、断水時の歯磨きはコーラでしていました。 お風呂は貯水式電気シャワーしかなく二時間かけて適温になったシャワーも1分も浴びると水になります。 何かの原因で街全体が断水になると2-3日は水も来ないので、トイレの水も流せず、街全体が臭い始める状態でした。 震災の避難生活等でご苦労された方のことを思うと不平不満は言えませんが、当時の私の生活はこんな感じでした。
 (1990年代の天津)
交通機関のバスは乗合バスで、定時運行はなく、お客さんである程度一杯になるまで発車はしませんでした。窓ガラスは無く、真冬は―15度の外気温と同じ。 路線図や次の停車場がどこという案内も無く、運転手に叫んで止めてもらわないといけない乗り物でした。 朝夕の出勤はほとんど全員が自転車通勤。 各交差点には信号ななく、夜を除いて信号代わりにほぼ全交差点に警察が立っており、手信号で誘導する時代でした。 食材については露店の市場しかなく、野菜は本当に季節のものしか店に出なかったため、真冬に手に入る野菜はたった3種類程度でした。 肉は豚肉しかなく、牛肉は手に入らず。 鶏はみなさんご想像の通り、生きたまま売っている時代でした。
・おまけ (昔、山九ではTVコマーシャルをやっていました。) バブル経済時、山九でもTVコマーシャルをやっており、当時海外での駐在員の活躍をCMで流すことになり、1993年当時、光栄にも天津駐在であった私が山九のCMに出演することになりました。 日本からプロのCM撮影部隊が入り、真冬の天津で三日間の撮影を敢行したのですが、出来上がったCMはたったの15秒! しかも撮影監督がCM出演用に選んだ私の服が、夏物スーツで凍え死にそうになったのを覚えています。 それでも、全国ネットのCMに出演でき、一生の記念となりました。 最初は日の出を背にコンテナトレーラーの間を仁王立ちして登場するのですが、最後は天津の町中で名物の肉饅頭を人民に囲まれて食べているというCMです。見られた方いらっしゃいますか?
 (1993年山九のTVコマーシャル撮影時の天津。中央が筆者、このとき早朝で―15℃!)
 (同じくCM撮影時。街頭で饅頭を食べるという設定で打ち合わせ中)
■二回目の赴任(当たり前の生活に感動)
そんな天津にほぼ15年ぶりに赴任となり、住む場所も同じ天津の港地区(タングー)となりました。
 (現在:天津港地区もこんなに綺麗に!)
まず住居は高層マンションが乱立し、レンガ作りの集合住宅というイメージは無くなりました。 勿論電気、ガス、水道は全く何の問題もなく、普通に生活できます。 大陸系や外資系のスーパーマーケットが街にでき、コンビニもちらほら見かけるようになりました。 品揃えは日本には遠く及びませんが、生きたままの鶏やそのままの姿の動物は売っていません。 日系の大型ショッピングモールも近くにあり、日本の食材や日系ブランドの衣料も少し高値ですが多少は手に入ります。
交通手段もすいぶん様変わりし、バスはエアコン完備。日本でいう“SUICA”のようなカードでバス代を支払いできます。 ほぼ10分に一本にくる路線バスは街の全地域を網羅しています。
 (現在:バス!バス!バス!)
庶民はマイカー通勤を開始し、自転車で通勤・通学している風景はほとんど見かけなくなりました。 欧米系、韓国系、日系メーカーなどの車が多種に渡り走っています。 また港の地区と天津市内を結ぶ専用電車も通り、市内へのアクセスも随分便利になりました。 港地区から北京へも便数は少ないものの、新幹線が走っており、昔は車で二時間以上かかった道のりを一時間で到着することができるようになりました。
 (現在:港地区と天津市内を結ぶ専用電車)
15年経って天津の生活も様変わりし、大変便利になりましたが、いくらインフラが整備され、生活が豊かになっても、交通ルールを守らない、バス、レジなどはきちんと順番を守らない、マンションのゴミをエレベーターの中に置いて所定の場所に捨てない等、モラル向上にはもう少し時間がかかりそうです。 飲食店やスーパーなどについても、国営企業社会から外資導入による経済の自由化により発展し、生産国家から消費大国へと発展しても未だにサービスという概念においては、課題が残っていると感じております。
当地で輸送・倉庫を営むにあたり、整理・整頓・清掃・清潔・躾という5Sの中で特に躾(しつけ)という部分に力を入れております。 決められたこと、当たり前のことを当たり前に行うこと、責任を持つことを根気よく辛抱強く唱え、日々社員と対話していくことを心がけております。 お客様へ良質なサービスを提供し、安全・品質・コンプライアンスを企業文化として根付かせるため、これからもこの天津で頑張っていきます!! (著者:笠井)
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