山九ヨーロッパの深牧です。 少し長いですが経歴を披露させていただきます。 1986年より横浜港でコンテナターミナル業務・本船プランナーを9年、輸入乙仲を5年、水島港で通関士・乙仲・港運業務を6年、東京でNVOCC業務を半年経験、そして入社21年目の2006年の夏に現在のオランダ・ロッテルダムに赴任(翌2007年より現法社長)、 当地勤務は今年で通算4年を経過いたしました。
■山九ヨーロッパ紹介
簡単に当社の概要を紹介いたします。
山九ヨーロッパは、1991年に当初はアムステルダムに設立、1993年よりロッテルダムに移転し、現在に至るまで山九グループの唯一の欧州拠点として皆様のご支援をいただき、2011年のクリスマスには設立20周年を迎えます。 現在はノンアセット型(自社ハードを持たず、貨種・作業に応じた最適のパートナー起用による独自ネットワークを活用)にて、EUを中心とした欧州全域及び隣接諸国において物流サービスを提供しております。
山九グループ各社とのキャッチボール業務(輸入品の船卸保管配送・輸出品の引取船積―海上航空輸送)が中心ですが、欧州の客先や地場フォワーダーには、山九グループの特にアジアにおけるネットワークの充実性をアピールし、時にはアジアでの輸入作業やアジアからの調達作業の獲得も行っております。 また、一般海上・航空貨物の他、特にプラント貨物についての豊富な船積作業実績を売り物にしております。
(オランダ・ロッテルダムの夕暮れ)
■ 欧州三大港湾
では、欧州の三大港湾についてご紹介いたします。
2009年のM/Tベースでの貨物取扱量世界ベスト20に、欧州の港がいくつ入っているかご存知でしょうか?
ロッテルダム港湾局の資料によると、実はたったの2港です。
オランダ・ロッテルダム(3億8700万M/T)が第4位(2006年に寧波舟山港に抜かれ順位が下がりました)、そしてベルギー・アントワープ(1億5800万M/T)が第16位となっております。但し、コンテナ貨物に限れば4港となり、ロッテルダムが第10位(974万TEU)、アントワープが第13位(731万TEU)、ドイツ・ハンブルグが第15位(700万TEU)、同じくブレーメン/ブレーマーハーフェンが第20位(457万TEU)となっています。
いずれも北海側の河川港湾であり、これらに共通して特徴的なことは、自国に限らずその後背地のためにも大いに利用されている港湾であることです。すなわち、国際河川であるライン川支流のマース川(ロッテルダム)、スヘルデ川(アントワープ)、エルベ川(ハンブルグ)、ヴェーザー川(ブレーメン)と、フランス東北部、スイス、ドイツ南部、中東欧諸国(オーストリア・チェコ・スロバキア・ハンガリー・ポーランド)とが水運(これらの河川は欧州内部の運河で接続)、または鉄道・高速道路網にて、さらにスカンジナビア・バルト海方面とはフィーダー航路で繋がっております。
(ドイツ・ハンブルク湾)
■港湾の広さと形状
ところで、三大港湾(ロッテルダム・アントワープ・ハンブルグ)の港湾地図を眺めていてもう一つ興味深い点は、港湾の広さと形状です。
ロッテルダム港は元々は河口からかなり遡った場所が発祥(ロッテ川という小河川とマース川との合流点に建設したダム(堤防))であり、その後北海に面する河口まで伸張していきました。現在ではほぼ幅3KM長さ40KM程度の港湾地域(川の両岸と中洲)が河口に向かって東西に広がり、コンテナ貨物からケミカル・鉄鋼まで網羅した欧州最大の港となっております。既に超大型コンテナ船は河口のターミナル「マースフラクテ地区」に入港していますが、現在も鉄パイプで土砂を堰き止めながら、「マースフラクテ2」という港湾拡張造成工事が進行中であり、さらに大規模なコンテナターミナルの増設が計画されております。
一方、アントワープ港の場合、実は河口付近から80KMほどまでは両岸とも隣のオランダ領であり、その奥にベルギーとの国境があり港湾地域があります。こちらは長さ的にはロッテルダムほどではありませんが、スヘルデ川に対して多数のドックが入り組んでおり、埠頭の付け根の道路(両岸)を辿っていくとやはり延長約50KMのCの字を描く形となります。ロッテルダムを直腸に例えるなら、アントワープは小腸の如き形状です。
そして、ハンブルグ港はエルベ河口から100KM程度奥に港がありますが、さらに肺の毛細血管のように幾重にも枝分かれしたドックがあり、やはり埠頭の付け根の道路(両岸)を辿っていくと延長約50KM強のWの字となります。
「50KM」は果たして日本の港湾ではどのくらいになるのか?ざっと調べてみると、およそ横浜港南本牧―川崎港―東京港荒川河口、又は神戸港和田岬―尼崎港―大阪港―堺泉北港を結んだくらいになり、欧州三大港湾は一港で日本の京浜港や阪神港全体の大きさをもつ、ということが実感できます。ちなみに、2009年のM/Tベースでの貨物取扱量世界ベスト20には日本からも2港がランクインしており、第12位は名古屋港(2億M/T)、第19位が千葉港(1億5千万M/T)となっています。千葉港は市川から袖ヶ浦までとすれば約50KMに達し、欧州三大港湾に「長さの上では」匹敵することになるかと思います。
対照的に、イギリスや、地中海側(スペイン、イタリア、フランスなど)の港湾は、主に自国内向けの利用が中心であるとか、国内に複数の有力港があるなどの事情もあり、統計上は下位となっています。そしてこれらの港の形状は日本の港によく見られるように、海岸線に対して垂直に櫛が並んでいたり湾に沿って弧を描いたりしているタイプが多いです。
欧州の港湾には、日本と比較し興味深い点(荷役機材や作業時間、検数など)がまだありますので、皆様にも是非ご見学の機会があればと思います。
(筆者:深牧)
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