2006年の第2メコン国際橋の完成以前は、メコン諸国における物流は各国別の法規や規則、慣習に基づく一国物流が基本であり、また海上輸送、陸路でのイントランジット輸送を主としていた。
だが、第2メコン国際橋完成以降は、貨物の越境や、車両の他国への通過が容易になり、物流が変化した。
◆陸上輸送
東西回廊や南部回廊などの国際幹線道路網は、ある程度舗装整備がなされており、また第2メコン国際橋により、直接国境を跨いだ往来が可能となった。
一方で、道路舗装率が98%以上のタイ以外の各国内における道路は、高水準で舗装整備された道路が少なく、各国とも交通渋滞が大きな課題となっている。
タイ:
貨物・旅客輸送の大部分を陸上輸送が担っているが、都心部近郊では急速な利用者の増加にインフラが追い付いていない部分も見受けられる。
ベトナム:
幹線道路や工業団地内の道路は整備されているが、都市間の道路などは整備が追い付かず、貨物が破損しやすい。また、台風や大雨の後には激しい渋滞が発生する。
国を上げ、主要道路の整備を早急に行う方針としている。
◆鉄道輸送
現状では、どの国の物流においても、鉄道の占める割合は大きいとは言えない。
タイ:
総距離4,000kmの鉄道網があり、マレーシアやラオス方面へ国際列車を運行している。
ベトナム:
総距離2,600kmの鉄道網があり、中国方面へと国際列車を運行している。
ミャンマー:
総距離6,100kmの鉄道網が存在しているが、ほとんどが非電化で、サービス水準は高くない。
カンボジア:
鉄道は存在するが、ほとんど利用されていないのが現状である。
ラオス:
タイからの国際列車が走る路線が数kmのみ存在している。
◆海上輸送
タイ:
1980年代以降に港湾設備が整備拡充された。主要港湾は、①レムチャバン港、②クローントゥーイ港(バンコク港、河川港)、③マプタプット港、④ソンクラー港であり、①レムチャバン港が最大の取扱港(519万TEU/2010年)である。
ベトナム:
北部にはハイフォン港に代わってカイラン港が新設され、南部はホーチミン港が内陸港で入港船規模に限度(最大3万トン)があることから、カイメップ・チーパイ港の建設が進み、大型ターミナルが続々と開設されている。
カンボジア:
プノンペンやシアヌーク地区の荷主の貨物は、シアヌークビル港もしくはプノンペン港からフィーダー船を利用し、ベトナム・ホーチミン港かベトナム・カイメップ港経由で輸出入される。
シアヌークビル港は、シンガポールへのフィーダー船が主で、日本向けの直行便は殆ど無い。
シンガポール経由で出荷する欧州向けはシアヌークビル港から発送される。
日本向けはプノンペン港を利用するのが一般的である。
シアヌークープノンペン間は輸送量が増加し、同時に輸送コストも下がってきている。
また、ホーチミン港経由の場合は、リードタイム上、プノンペン港からフィーダー船を利用するより、陸路でホーチミンまで輸送した方が速いため、コストは高くなるが陸上輸送が利用されることもある。
ミャンマー:
外貿貨物の90%以上が、国際的な輸出入港であるヤンゴン港において取扱われている。
また、河川を利用した貨物輸送も頻度が高くなってきている。
ティラワ工業団地の新設により、ティラワターミナルへの貨物取扱量も増え始めている。